経営の現場で、いちばん多く耳にする言葉があります。「時間さえあれば」。
新しい施策を打ちたい。仕組みを整えたい。けれど、目の前の処理に追われて、一日が終わってしまう。だからもっと時間が欲しい ― そう感じている方は、決して少なくありません。
けれど、ここで一つ、はっきりと申し上げたいことがあります。時間は、管理できません。
少し乱暴に聞こえるかもしれません。手帳を工夫しても、タスク管理アプリを入れ替えても、一日が二十五時間になることはありません。時間は、誰にとっても等しく、そして容赦なく限られた資源です。「時間管理術」という言葉は、どこか、その限られた量そのものを増やせるかのような響きを持っています。けれど、増やせないのです。
では、何ができるのか。管理できるのは、時間ではなく「自分自身」です。 これが、時間術における最大の秘訣だと、私たちは考えています。
「時間が足りない」の正体は、たいてい別のところにある
一日が足りないと感じるとき、本当に起きていることは何でしょうか。多くの場合、それは「時間が少ない」という問題ではありません。限られた時間が、価値を生まない作業に静かに吸い取られている、という問題です。
少し、ご自身の一日を思い返してみてください。「事業のため」という名目で、実はそうではない作業を、いくつも抱えていないでしょうか。
- 目的のないネット検索
- 私的な連絡への即レス
- 増え続ける通知への対応
- 「念のため」と開く、読まなくてよいメール
- 誰のためでもない、手戻りの多い確認作業
これらを一切してはいけない、と申し上げているのではありません。けれど、こうした作業の多くは、事業の成果とは無関係です。にもかかわらず、一日のかなりの部分を占めてしまう。ここに、「時間が足りない」の正体の、かなりの部分が隠れています。
各種調査によると、デスクワーカーが一日のうち本来の業務に集中できている時間は、想像よりずっと短いと指摘されています(※要検証)。問題は時間の総量ではなく、その使われ方にあるのです。
まず一週間、自分の時間を「見える化」する
では、どこから手をつけるか。派手なテクニックの前に、地味で、けれど決定的に効く一手があります。
一週間、自分の行動を記録してください。
道具は何でも構いません。表計算ソフトでも、スマートフォンのメモでも、一枚の紙でも。大切なのは、一日の時間を ― できるだけ細かく ― 残らず書き留めることです。「何に」「どれだけ」使ったのか。それを一週間、ただ淡々と記録します。
なぜ記録なのか。理由は単純です。見えないものは、減らせないからです。
多くの経営者の方が、自分の時間泥棒を「だいたい分かっている」とおっしゃいます。けれど、実際に書き出してみると、ほぼ例外なく驚かれます。価値を生まない作業に費やしている時間は、たいてい、自分の感覚よりずっと多いのです。記録は、その事実を、言い逃れのできないかたちで目の前に差し出してくれます。
記録のとり方そのものに迷われる方は、時間を「記録」して、消えていく時間を見つける もあわせてご覧ください。具体的なつけ方を一つずつ解説しています。
記録を、四つに仕分ける
一週間の記録がたまったら、見返しながら、すべての項目を仕分けていきます。
- 浪費 ― 成果を生まない作業。ここに、まず印をつける。
- 任せられるもの ― 自分でなくてもよい作業。誰かに、あるいは仕組みに渡せる。
- 自分がやるべきもの ― これだけは自分の手で、というもの。
- そのうえで「自分がやるべきもの」を、さらにお金を生む活動と、生まない活動とに分ける。
この仕分けが、そのまま打ち手になります。浪費は削る。任せられるものは手放す。 そして残った「自分にしかできない、お金を生む活動」に、解き放たれた時間を注ぐ ― それだけのことです。
特に最初の「削る」は、最も地味でいて、最も効きます。新しいアプリを導入することでも、誰かに頼むことでもなく、ただ、やめる。コストもかからず、今日から始められて、確実に時間が戻ってくる。これほど確実な一手は、そう多くありません。
一か月で、自分なりの仕組みに変えていく
ただし、ここで気をつけたいことがあります。一度にすべてを変えようとしないことです。
人は、急な変化に長く耐えられません。多くの場合うまくいくのは、一度に一つの課題に取り組むやり方です。今週はこの時間泥棒を一つ手放す。来週はもう一つ。そうやって毎週、一つか二つを取り除きながら、一か月かけて、自分なりの「時間の使い方の仕組み」をつくり上げていく。
そして、手放すと決めた作業には、できるだけ具体的な目標を添えてください。「何を」「誰が」「どのように」「いつまでに」。この四つが曖昧なままだと、決意は数日で溶けてしまいます。逆に、ここを徹底して具体的にするほど、変化は定着します。
行動が変われば、不思議なことが起こります。一日の長さは一秒も変わっていないのに、まるで時間が増えたかのように感じられるのです。かつて静かに吸い取られていた時間が、自分の手に戻ってくる。あの「時間さえあれば」という嘆きが、少しずつ遠ざかっていきます。
時間は、増やせません。けれど、自分自身を整えることで、増えたのと同じ実感は、必ず手に入ります。それが、時間術における、いちばん大きな秘訣です。
時間泥棒を「削る」ことから始めたい方へ。一週間の記録のとり方から、手放す・任せる・仕組み化する・自動化するまで ― 忙しい経営者が、より少なく働いて、より多くを成し遂げるための具体的な手順を、無料レポート 「時間管理の成功法則」 にまとめました。下記より受け取っていただけます。
あわせて読みたい:時間を成果に変える全体像は、柱となる記事 忙しい経営者のための時間管理 ― 4つの鍵 で解説しています。今回お伝えした「削除」のほかに、「委ねる」「仕組み化」「自動化」という残り三つの鍵を知ることで、戻ってきた時間を、確かな成果へと変えていけます。
コメントを残す