正直に申し上げます。時間は、管理できません。
一日は24時間。経営者であろうと、新人であろうと、誰にとっても同じです。増やすことも、貯めることも、取り戻すこともできません。ですから「時間管理」という言葉そのものが、少しだけ嘘を含んでいます。私たちが本当に管理できるのは、時間ではなく、その時間に何を入れて、何を入れないかという選択だけなのです。
そして、その選択の質を決めるのが「目標設定」です。
多くの方は、目標を「やりたいことのリスト」だと考えています。けれど、忙しい経営者にとっての目標設定は、むしろ逆向きに働きます。明確な目標とは、やらなくていいことを照らし出す光です。向かう先がはっきりしているほど、「これは、その先につながらない」と判断できる物事が増えていく。目標設定とは、夢を描く作業である以上に、捨てる基準をつくる作業なのです。
「忙しい」のではなく、「選んでいない」だけかもしれません
一日の終わりに、こんな感覚を抱いたことはないでしょうか。
朝から動き続けた。メールに返し、見積もりをつくり、問い合わせに対応し、打ち合わせをこなした。それなのに、夜になって振り返ると、「結局、今日は何が前に進んだのだろう」と思う。手は止まらなかったのに、事業は一歩も進んでいない感覚。
この感覚の正体は、能力不足でも、努力不足でもありません。行き先を決めずに、目の前に現れた物事を、現れた順に処理しただけの一日だった、というだけのことです。流れに身を任せれば、一日はいくらでも他人の用事で埋まります。問い合わせも、依頼も、相談も、それ自体は悪いものではありません。ただ、そのすべてに同じ重さで応じていたら、あなた自身の事業を前に進める時間は、どこにも残りません。
ある調査によると、目標を紙に書き出す人は全体のごく一部にとどまり、書き出した人の多くも、結局それを実行に移さないと言われています(※要検証)。けれど、ここで本当に大切なのは「書く・書かない」ではありません。書いた目標を基準にして、日々の物事を選り分けているかどうかです。
達成できる目標とは、「測れて、分解できる」目標です
では、捨てる基準になる目標とは、どんなものでしょうか。
「もっと売上を伸ばしたい」「もっと自由になりたい」 ― これらは目標ではなく、願望です。願望は、日々の判断の役には立ちません。なぜなら、測れないからです。今日の行動が、その願望に近づいたのか遠ざかったのか、判定できません。
達成できる目標には、二つの条件があります。
ひとつは、測れること。「年内に、新規の取引先を3社増やす」のように、数字で言い切れること。もうひとつは、分解できること。その3社のために、今週は何をするのか。今日は何をするのか。大きな目標を、今日のカレンダーに入る大きさのタスクにまで切り分けられること。
目標が小さく分解されていれば、一日の終わりに「達成できたか・できなかったか」がはっきりします。この小さな達成の積み重ねこそが、「今日は前に進んだ」という感覚をつくり、行き当たりばったりの一日から、あなたを連れ出してくれます。
「収入を生む仕事」と「そうでない仕事」を切り分ける
目標を立てたら、次にやるべきことは、おそらくあなたの予想とは逆です。新しい行動を足すことではなく、今やっている物事を、目標の光に当ててみることです。
すべての作業を、ふたつに分けてみてください。
ひとつは、収入を生む仕事。新しい取引先と話す。提案をつくる。今のお客様との関係を深める。事業を前に進める活動です。もうひとつは、収入を生まない仕事。それ自体は必要に見えるけれど、あなたがやらなくてもいい作業 ― 繰り返しの事務、誰かに任せられる連絡、慣れだけで続けている手順。
この切り分けこそが、時間術の核心です。そして、その結論はとてもシンプルです。目標につながらない仕事は、減らすか、手放すか、いっそやめてしまう。 これは怠けることではありません。限られた24時間を、本当に意味のある場所に集中させるための、最も誠実な判断です。やめてみて困らなかった仕事は、はじめから必要のなかった仕事です。
「やらないこと」を決めることは、「やること」を決めること以上に、あなたの一日を変えてくれます。
一度立てた目標は、一年かけて育てていくものです
最後に、ひとつだけ。
目標は、立てた瞬間に完成するものではありません。事業は動き、状況は変わります。だからこそ、月に一度でかまいません。立ち止まって、数字を確かめ、計画がずれていないかを点検する時間を持ってください。
時間術の秘訣をどれだけ知っていても、やり抜かなければ、望む結果には届きません。逆に言えば、完璧な計画でなくても、見直しながらやり抜く人が、最後には前に進んでいます。目標とは、紙に書いて終わる宣言ではなく、一年を通して手をかけ、育てていくものなのです。
時間は管理できません。けれど、目標を起点に「やること」と「やらないこと」を選び続ければ、あなたの一日は、確かにあなたのものになっていきます。
一日を取り戻すための、次の一歩
「やらないことを決める」と言われても、いざ自分の仕事を前にすると、どれを手放していいのか分からない ― そう感じるのは、自然なことです。
無料レポート 『時間管理の成功法則』 では、この記事でお伝えした目標設定を出発点に、忙しい経営者が時間を取り戻すための具体的な手順をまとめています。何を任せ(委ねる)、何を仕組みにし、何を自動化し、そして何を手放す(削除)のか ― 限られた24時間を、本当に意味のある仕事に集中させるための4つの鍵を、ワークシートとともにお届けします。
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*あわせてお読みください ― 時間に追われる毎日から抜け出すための全体像は、柱記事「経営者の時間管理 — 仕事に追われる毎日を変える「4つの鍵」」でお話ししています。目標をもとに仕分けた「収入を生む仕事/生まない仕事」を実際にどう扱うかは「忙しいのに、なぜ売上が伸びないのか」を、あわせてご覧ください。*
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