毎日きちんと働いているのに、夜になると「今日は何が進んだのだろう」と思う——。
小さな会社を営んでいると、こういう日が珍しくありません。サボっていたわけではない。むしろ朝から晩まで動き続けていた。それなのに、肝心の仕事は思ったほど前に進んでいない。
その正体は、たいてい「自分では気づいていない時間泥棒」です。
サボりは記憶に残るので、自分でも気づけます。やっかいなのは、悪気のない習慣のほうです。メールをこまめに開く。スマホに届いた通知をつい確認する。「いつでも声をかけていいよ」と、従業員にも取引先にも、家族にすら扉を開けっぱなしにしておく。一つひとつは数分です。けれどその数分が積み重なり、週に何時間、忙しい人なら一日に何時間もの損失になっていきます。
問題は、この損失が家計簿の支出のようには見えないことです。お金なら通帳に記録が残ります。時間には記録が残りません。だから、どこで漏れているのかが、いつまでもわからないのです。
時間は増やせない。だから「中身」を変えるしかない
正直に申し上げると、「時間管理術」という言葉には、少し誤解が含まれています。
時間そのものは、管理できません。一日が24時間であることは、誰にも変えられない。どんなに優秀な経営者でも、明日の朝に25時間目をつくることはできません。時間は、自然から等しく配られた、動かせない量です。
ですから、本当に管理すべきなのは時間ではなく、「その時間で、自分が何をしているか」です。
そして、自分が何をしているかを正確に知るには、たった一つの地味な作業が要ります。記録すること(タイムトラッキング)です。
これは特別な才能でも、根性でもありません。家計を立て直したい人が、まず一週間の支出を書き出すのと同じです。何にいくら使っているかが見えなければ、どこを削ればいいかは決められません。時間もまったく同じで、記録して見える化してはじめて、削除する判断ができるのです。
まず一週間、自分の時間を書き出してみる
やり方は驚くほど単純です。
スマートフォンのメモでも、手帳でも、無料のタイマーアプリでもかまいません。一週間だけ、自分が何に時間を使ったかを15分単位くらいで書き留めてみてください。完璧でなくて大丈夫です。「午前中ずっとメール対応」「打ち合わせの合間にSNSを30分」——その程度の粒度で十分です。
一週間後、多くの方が同じ感想を口にします。「こんなに使っていたとは思わなかった」と。
記録は、言い訳を許しません。「ちょっとだけ」と思っていたSNSが、一週間分を足すとまとまった時間になっていた。「すぐ終わる」と思っていたメール対応が、一日のうちかなりの割合を占めていた。漠然とした感覚が具体的な数字になって目の前に並んだとき、はじめて削除の対象がくっきりと見えてきます。
記録すると姿を現す、よくある時間泥棒
書き出した一週間を眺めると、たいてい同じ顔ぶれが浮かび上がります。
SNS。 事業に注目を集める素晴らしい手段ですが、同時に最大級の時間泥棒でもあります。仕事用と私用のアカウントを分け、SNSに触れる時間をあらかじめ予定に組み込んでしまいましょう。私用のSNSは、プライベートの時間に。
メール。 いまは、すぐ返信が来ないと不安になるほど、私たちはせっかちです。けれど本当は、メールを処理する時間を一日に1〜2回と決めておくのが一番です。郵便物と同じ扱いがおすすめです。一度だけ手に取り、読み、対応し、保存するか削除する。何度も開き直さない——これが鉄則です。
スマホの通知。 仕事中は、すべてのメールやSNSの通知をスマホに飛ばさないこと。本当の緊急時に連絡が取れる手段だけ残し、その「緊急」の定義も、あらかじめ相手と共有しておきます。常につながっていなくても、仕事は回ります。むしろ、つながりすぎてはいけないのです。
収入を生まない作業。 記録を見ると、一日の多くが「やった気にはなるが、売上には直接つながらない作業」で埋まっていることがあります。こうした作業は、必要な売上に届くだけの「お金を生む時間」を終えてからに限定しましょう。多くの時間を収入を生む仕事へ向けると、「重要だと思っていたことが、実はそうでもなかった」と気づくものです。
見えたら、迷わず「削除」する
記録の目的は、自分を責めることではありません。
「こんなに無駄にしていた」と落ち込むためではなく、消してもいい時間を見つけて、実際に消すためです。一週間の記録を眺めて、こう問いかけてみてください。
「この時間は、なくなったら本当に困るだろうか?」
困らないものは、思い切って削除する。減らせるものは、減らす。任せられるものは、誰かに任せる。記録という地味な一手間が、こうして「削除」という最も効く一手につながっていきます。
時間管理が続かない人の多くは、ツールや手帳から入ろうとします。けれど順番が逆です。まず記録して、自分の時間の使い方を直視する。見えてはじめて、削除できる。見えないものは、減らせないのです。
時間泥棒は、姿を見せてはじめて退治できます。まずは一週間、自分の時間を記録することから始めてみてください。それだけで、明日からの一日の手応えが、静かに変わっていくはずです。
時間記録で見つけた「よくある時間泥棒」を一つずつ断っていく具体策は、「集中を奪う「時間泥棒」を断つ」でも掘り下げています。そして、記録から削除までを含めた時間管理の全体像は、柱となる記事「経営者の時間管理 — 仕事に追われる毎日を変える「4つの鍵」」にまとめました。あわせてご覧ください。
自分の時間がどこへ消えているのか、その全体像を整理したい方へ。小さな会社の経営者・フリーランスのための無料レポート「時間管理の成功法則」をお配りしています。時間記録のテンプレートと、見つけた無駄を「任せる・仕組み化する・自動化する・削除する」の4つに振り分けるための考え方を収めました。下記より、お受け取りください。
コメントを残す