経営者の自己管理 成功の秘訣——「時間」ではなく「自分」を整える

「時間が足りない」。

経営者やフリーランスの方から、もっとも多く聞く言葉です。けれど、ここには一つの誤解が隠れています。私たちが本当に管理すべきなのは、時間ではありません。管理すべきなのは、自分自身です。

一日は二十四時間と決まっています。どれだけ望んでも、一分たりとも増やせません。時間は有限で、取り戻すこともできない。だからこそ、「時間を増やす」という発想を手放してみてください。問いを変えるのです。「与えられた時間を、どう使う自分になるか」。ここから、自己管理がはじまります。

事業を始めたとき、タイムカードを押す日々は終わったと思った方もいるでしょう。ところが現実は逆で、自分でスケジュールをつくり、それを守る力が、以前よりずっと大切になります。 違いはただ一つ。今度は、自分に一番合ったかたちを、自分で設計できるということです。

「自分でやったほうが早い」という思い込み

多くの経営者が、知らないうちに一つの前提を抱えています。「自分でやったほうが早いし、確実だ」。

たしかに、その瞬間だけを見れば正しいかもしれません。けれど一日、一週間、一年という単位で見たとき、この思い込みこそが、あなたの時間をもっとも奪っているものです。すべてを自分で抱える限り、事業はあなたの体力の限界より大きくはなれません。

ここで一つ、判断の基準をお渡しします。

ある仕事を誰かに任せたとき、その費用が、自分がお金を生む仕事で稼ぐ時給より安いなら——任せない理由があるでしょうか。

経理の入力、SNSの投稿、資料の整形。かりに自分の時給を三千円とするなら、その作業を一時間かけて自分でやるより、誰かに任せたほうが、結果としてあなたの手元には「お金を生む時間」が残ります。仕事でも、家庭のことでも、考え方は同じです。自分が価値を生む仕事に使える時間を増やすほど、状況は静かに、確実に良くなっていきます。

まず「お金を生む仕事」から並べる

任せる前に、やるべきことが一つあります。自分の仕事を、優先順位で並べ直すことです。

日・週・月・年。それぞれの単位で、やるべきことに時間を割り当ててください。予定として組み込まれたものは、人は実行しやすくなり、やり終えたときに気分よく次へ進めます。

そして並べる順番には、はっきりとした原則があります。お金を生む仕事を、最優先に置く。 ほかの仕事も大切です。けれど、収入につながる仕事を先に片づけておけば、まず支払いの不安が消えます。心の余裕は、ここから生まれます。

そのうえで、地味で収入につながらない作業を見極めてください。それこそが、人に任せるべき仕事です。

任せるための、三つの順番

「任せる」と言われても、何から手放せばいいのか分からない。そう感じる方のために、順番をお伝えします。

一つめ。繰り返す作業から手放す。 毎週・毎月、同じ手順でやっている仕事はありませんか。請求書の発行、定例の連絡、データの集計。手順が決まっているものは、説明さえ整えれば、もっとも任せやすい仕事です。

二つめ。人に頼む前に、道具に任せられないかを考える。 たとえばSNS。参加することは大切ですが、放っておくと大きな時間泥棒になります。新しい記事の告知を自動で投稿する、投稿を予約しておく——こうしたことは、いまの道具で簡単にできます。設定には少し手間がかかりますが、一度整えれば、多くの作業が自動で回りはじめます。

そのうえで、SNSに使う時間は自分で区切ってください。「返信は一日合計十件まで」と数で区切ってもいいですし、「一日◯分まで」と時間で区切ってもかまいません。スマホのゲームを「これも仕事のSNSだ」と言い聞かせるのは、やめておきましょう。そういうものは、プライベートの時間に。

三つめ。任せた仕事は、手順として残す。 一度きりの口頭の指示で終わらせず、簡単な手順書にしておく。そうすれば、次に別の人へ任せるときも、同じ説明を繰り返さずに済みます。任せることは、あなたの頭の中にある知恵を、外に取り出して仕組みにする作業でもあるのです。

プライベートの時間も、予定に入れる

自己管理は、仕事だけの話ではありません。

一日のなかに、自分と家族に合ったかたちで、プライベートの時間も組み込んでください。たとえば、お子さんが午後三時半に学校から帰ってくる。そばにいてあげたいなら、その時間を軸に一日を組み立てる。育児を外注することもできますが、したくなければ、戦略的に人を配置すればいいのです。

大切だと感じることを先に決め、その軸に沿って一日を組み立てること。そして、できるかぎりスケジュールを守ること。それが、時間をうまく扱うということです。

自己管理が、時間を生む

自分の時間を自己管理しはじめると、一日が驚くほど長く感じられます。

時間は無限の資源ではありません。だからこそ、毎日「最大限の成果が出る行動計画」を持つことが大切です。そしてその計画の中心にあるのは、いつも同じ問いです。

「これは、本当に自分がやるべき仕事だろうか」。

その問いに「いいえ」と答えられた仕事を、一つずつ手放していく。任せる。仕組みにする。自動化する。そして、そもそもやらなくていい仕事は、思いきって手放す——委ねる・仕組み化・自動化・削除。この四つを回していくと、空いた時間が、あなたにしかできない仕事のために残りはじめます。時間管理の成功とは、つまるところ、この一連の自己管理に尽きるのです。

時間は、つかまえようとすると逃げていきます。けれど、自分を整えれば、自然とついてきます。まずは今日の予定を、自分の手で組み立て直してみてください。


自己管理を、その日かぎりの気合いではなく「仕組み」にしたい方へ。

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なお、時間管理の全体像については、柱記事「経営者の時間管理 — 仕事に追われる毎日を変える「4つの鍵」」にまとめています。また、本記事で触れた「任せる」を小さく始める手順は「「任せる」ことで時間を取り戻す」で詳しくお話ししています。あわせてご覧ください。


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